小さな灯り

行き場のない魂はどこへ行けばいいのでしょう
抱きしめる腕も
かばってくれ腕もないというのに
君は、あどけない瞳を向け、笑いかける
何が悪かった訳ではない
誰が悪かった訳でもない
精一杯の愛は
それでも すり減って行くのだと

ただ、見つめることしか出来ないけれど
ぞれでも君は
たくさんの愛情を受け取ったのだと
安堵して
消えていく命の炎を見守るよ

秋の訪れ

遮るもののなくなった太陽は
その思いを込めて
湖面に黄金色の光を投げかける
水は 両腕を広げて光を受け止め
光と共に戯れる
夏 太陽が西に傾き 明日への準備を始める頃
秋の気配を感じさせる季節
太陽があらん限りの力で降り注ぐ 真夏を過ぎたこの季節
湖面は懐かしむように
水をはじく

沈殿

街のざわめきが聞こえてくる
これは朝でも昼でも夜でも決して消えないみたいだ
何もすることがないので 外に出てぶらついていたら
行き交う人間が冷たい機械に見えた
話し声がやかましい 誰かと話すのがうっとうしい
だんだん 心が沈んでくる

このままずっと わけがわからない程 おりていこう
何も聞こえなくなるまで
そして ほんの少し孤独にたえていよう

このままずっとわけがわからない程 まっていよう
かすかなあかりが見えるまで
それまで ほんの少し孤独にたえていよう

少しだけ 気持ちが楽になったの
このままずっとここにいようかな
何も聞かなくていい
何も見なくていい
話をしなくてもいい
考えることさえいやなので
このままずっと ここにいることにした

なんだか とても面倒くさいので
このままずっと わけがわからない程ここにいよう
闇の中にとけるまで

それまでは とりあえず ほんの少し孤独にたえていよう

心の中の街

この間 私 昔住んでた街のことを思い出した
なぜ思い出したのか よくわからないけど
無性に恋しくなって 気がついたら電車に乗ってた
1時間に1本あるかないかの電車を乗り継いで
鈍行に ゴットンゴットン揺られていたら…

突然 見覚えのある風景が 目の中に飛び込んできた

あの丘 あの道 あの木

あの子達と同じように 私もあの木の下で遊んだ

あの家ね おじいさんとおばあさんが住んでいて
よくかわいがってもらったし、飼ってた子犬と毎日遊んだ

急いで駅を出たら 駅前の雑貨屋さんがそのまんま
店がちょっと並んでるだけの商店街もそのまんま
向こうから 子犬が飛び出してきそうなの

わくわくしながら おじいさんとおばあさんの家に行って
そっと庭先を覗き込んだ

その時…

私 やっと気づいた

よく見たら 道がアスファルトに変わってる
どこにでもある化粧品屋さんの看板が並んでる

あの木の下で遊んでる子供たちの中に 私はもういないし
この街の時の流れの中にも 私はいなかった
この街を出てからの時間のほうが 私には長かったんだよね

もちろん 子犬なんかいない
おじいさんとおばあさんもいない
知らないおばさんが 私のことをチラッと見ただけ

でもね

私 これから何回でもこの街のこと思い出す
だって 私がどこにいても この街は
私が出て行く前の
あの時のまんま
ちゃんとそこにあるんだから…

観覧車

君を見つめだしたその時から
心は動き出した
窓に映る君の横顔が闇にとけこむ

恋する事を忘れかけていた
愛する事も忘れかけていた

二人はじめての観覧車

二人の時がながれ
頬にキスした

うつむく君をそっと抱き寄せた

回り続ける二人の時間
…永遠に

闇につつまれ
てらすキャンドルに
永遠の誓いを…

あの時の出会いがなければ
今の二人はなかったよね

遠くに光る観覧車をずーっとみつめていた

ああ せつなさを 
この思いを癒してくれるのは
君だけ

ああ 苦しさを
この孤独を癒してくれるのは
君だけ

そっと君にキスをしよう
君の心がこわれないように

赤い月

夜の中に 月が見えました
赤い月
まるで 寝ぼけた太陽が
出てきてしまったような
夕陽のような
やわらかな赤の光でした