心の中の街

この間 私 昔住んでた街のことを思い出した
なぜ思い出したのか よくわからないけど
無性に恋しくなって 気がついたら電車に乗ってた
1時間に1本あるかないかの電車を乗り継いで
鈍行に ゴットンゴットン揺られていたら…

突然 見覚えのある風景が 目の中に飛び込んできた

あの丘 あの道 あの木

あの子達と同じように 私もあの木の下で遊んだ

あの家ね おじいさんとおばあさんが住んでいて
よくかわいがってもらったし、飼ってた子犬と毎日遊んだ

急いで駅を出たら 駅前の雑貨屋さんがそのまんま
店がちょっと並んでるだけの商店街もそのまんま
向こうから 子犬が飛び出してきそうなの

わくわくしながら おじいさんとおばあさんの家に行って
そっと庭先を覗き込んだ

その時…

私 やっと気づいた

よく見たら 道がアスファルトに変わってる
どこにでもある化粧品屋さんの看板が並んでる

あの木の下で遊んでる子供たちの中に 私はもういないし
この街の時の流れの中にも 私はいなかった
この街を出てからの時間のほうが 私には長かったんだよね

もちろん 子犬なんかいない
おじいさんとおばあさんもいない
知らないおばさんが 私のことをチラッと見ただけ

でもね

私 これから何回でもこの街のこと思い出す
だって 私がどこにいても この街は
私が出て行く前の
あの時のまんま
ちゃんとそこにあるんだから…

よろしければ、一言どうぞ