心の操作

こんな時は、一度に幾つかの負担が心を襲う。
で、
こんな時は、台風が通り過ぎるのを待つように
心がすっきりしていくのを待つだけ。

嵐の後というのは、大抵、空は澄み渡って青い色をしている。
多くの取り残された雲を空中に撒き散らして。

いろんなシチュエーションで一緒にいるイメージがなくなるまで。

車の中や、ただ歩いている道。
行ったこともない場所を歩いていたり、向かい合って座っていたり。

自然と沸き起こるイメージを、その都度取り消して、
その都度言い聞かせる。

写真が出てきても、胸が痛まなくなるまで。

そんな会話はないんだよ。
そんな所へは行かないんだよ。誰か別の人と行けばいい。
リストに名前が乗ることは無いんだよ。昨日、消しちゃったから。

そう言い聞かせても、あり得ない事をまた思ってる。
そうして、些細な事で泣けてくる。

自分でも笑ってしまう。

紛らわすには、心が孤独になってはダメ。
でも、こんな時は勝手に孤独になるんだよね。心ってやつは。
諦めて浸ってしまえば、何も出来なくなる。

心が重くて、それが辛くて。

いくつになっても、心の操作は難しい。

焔の扉

開かれた扉の前に立ち
あなたの思いに包まれる
吹き抜けた風が空へ舞い上がる
涙があふれたのは決して悲しいからじゃない
あなたの残した剣を手に取ろう
愛の証に

遠くで打ち寄せる波のように
かすかにあなたの声が聞こえる気がする
あなたの夢を守りたい
だから あなたの残した剣を手に取ろう
愛した証に

燃え上がる炎
憎しみの刃が空気を切り裂く
これがあなたの愛した大地
燃え尽きた残骸の中から立ち上がろう
荒野を進めば必ず光が見えてくる

次は 閉じられた扉を私が開こう
あなたの残した剣を握りしめ
その前に立とう
今も愛しているという証に

永遠

空を見上げた瞳から
涙がポロっと流れ落ちた
突然
思い出の中にだけ存在する
君の面影を思って

こんなの不公平だと
言ってしまうのは簡単だけど
会いたいと
言ってしまうのは簡単だけど

言葉にしてしまえば
君の面影すら
消えてしまうような気がして

帰りたくないと 君は言った
ここはきれいだから・・・と

ひきとめる術もなく
ただずっと その時が来るまで
君の姿を追っていた

過ぎて行くだけの時間

振り向いて 笑って
はしゃいで 笑って
見つめて ゴメンねと泣いて

がんばってと励まして
大丈夫だと抱きしめて
愛しているとキスをして

時間が止まるなら
今、この時でいいのに

夢のかけら達

あたりを見回すと キラキラしたかけらがそこら中に

いったい どれだけの夢を見て
いったい どれだけ置き去りにしたんだろう

だけど、一つだけ言える事

夢は、いつもそこにあって
いつも追いかけている

ここにあるのは、その残骸?
全部のかけらをかき集めたら・・・・・

そこにあるのは、
もしかしたら、私だけの夢じゃないかもしれない

たくさんのかけらをかき集めたら・・・・・
前に続く道は、捨てたもんじゃない

もう一度 かけらを一つずつ丁寧にひろって
大事なかけらを集めよう。
そんなかけらが集まったら・・・・
きっと 夢はホントになる。

一冊の本が出来たみたいに。

音を拾い集めて曲ができるように

心が感情でいっぱいになって
こぼれ落ちた言葉が 詩になるみたいに。

たくさんの人の夢のかけらを拾い集めたら
夢はきっとホントになる

かがやき

暗く もの寂しげな部屋から
つかみどころのない空が まぶしくひかる
輝きすぎて 目を 少しふせる
まぶしげな色が からだをもちあげ
ふせかけた目の前に 空の色がせまる
輝きの雨が からだをてらし
白い雲が 心だけもって 空の上へ運んでいく

青い屋根がひかり 部屋の窓が小さくなっていく
道を通る車も 汗をかきながらこぐ自転車も
いつのまにか 砂粒のように変わっていく

高く 高く
 
あの空よりも高く
ただ 高くいけばそれだけでいいような
それだけで しあわせな感じがして

ひとかじりのりんご

青い空から落ちてきた
ふわりと落ちた赤いちんご
草の上できょてんとしてる…
悲しさでぬれた赤いほっぺに
太陽の光がはじいて光る
青い空 見上げながら
何を考えているんだろう
ある日 ポツンと落ちた
ひとかじりのりんご
川のせせらぎを聞きながら
涙が ポツリと葉に落ちる
暗闇の中で
何も見えず 何も聞こえず
ひとかじりのりんごは
静かに 目をとじる

悪魔

悪魔が体の中を走り回る
足のつまさきから 手の指先から
頭のてっぺんまで
すみから すみまで
中途半端な気持ちのトビラの隙間から
スルリと入り込んだ

 

出てってよ、用はないよ!
 誘惑する必要はないよ
 このままでいいんだから!!!
 …?

ニヤリと笑った悪魔は 小汚く言葉を吐く

 

うそをつけ! うそをつけ!!

悪魔は走り回るだけで あとは何もしない
何も言わない

 

何もしないなら出て行ってよ!
 邪魔なだけなんだから

悪魔は無表情のまま 言う

 

待ってるんだ

 

いったい何を?

待ってるんだ!!

別離 ―そして 旅立ち―

それは 突然やってきたのだろうか
ふと 気がつくと
それは セピア色の写真のように
なつかしくはあるが 色あせ
生きて動いているはずなのに
まるで廃墟と化したギリシャ神殿のように
空しく
さびしくはあるが
私を そこに とどめようとはしない

悲しさ 愛しさ 楽しさ 苦しさ 嬉しさ
そんなものを共にしてきたはずなのに
今では それぞれのものとなり
決して 分かち合うことはない

それは そっと それぞれの胸の奥にしまわれ
ただ 漠然と
それは存在した という過去の中に置き去りにされ
時に 振り返ることはあっても
私が 決して 戻ることのない場所

私は ただただ前を見つめ
私の意思が命じるままに
私の行くべき場所に向かって
歩き始める

不安と
けれど それよりも大きな期待をもって
私は歩き始める

いつのまにか 私は血を流し 傷だらけになりながら
振り返ることを忘れ
立ち止まることも忘れて
私の意志の命じるままに
私の行くべき場所に向かって
歩きつづける

勇気と情熱だけをにぎりしめ
私の存在だけを頼りに
私は歩きつづける