遊離

草が風にゆらりとゆれた
私の身体も ゆらりとゆれて
心だけが宙にうかんだ
青い空に向かって とびだした
横たわる私の身体が遠く下に見えた
蝶が 私と一緒に宙を飛んだ

「どこへ 行こうか」

けれど 蝶は力尽きた

海へ出た
空の青さをうつした海に私の心の影が
ポツリとうつった
鳥が私と一緒に空を飛んだ

「どこへ 行こうか」

けれど 鳥は力尽きた

地球がまあるく見えた
ところどころに大地があって
ところどころに白い雲がうかんでた
あの青さは 海のせいか空のせいか
よくわからないけど
とにかく 地球がまぁるく見えた

星が私と一緒に宇宙を飛んだ

「どこへ 行こうか」

けれど 星は力尽きた

私は一人 とびつづけ
ついには 銀河をこえた

「どこへ 行こうか」

「はるか 彼方まで」

サハラ

サハラ
これまで数多くの命をその腕にひきずりこんだ
おまえは おぼえているだろう?
たった一人 おまえに挑戦した魂を

サハラ
砂の海と呼ぶにふさわしい
お前を限りなく愛し
おまえに命の限りをつくした

彼は 今もお前の中に眠る
知っているだろう?
たとえ 身体をおまえにささげても
彼の魂は おまえをつつむ

この力強い生命力
人間の介入を許そうとしないおまえの目の前で
私は挑むこともできず 立ち尽くしている
けれど サハラよ
おまえは わかっているだろう
ただ 思いをはせ
お前をみつめることしかできない私の夢を

贈る言葉

あれは 幼い日の出来事
今ではあまりにも遠い日の出来事
それは 私の心の中の小さな部屋にしまわれているの
でも とびらを空けると
それは 今 おこった事のようによみがえってくるの
精一杯大人のふりをして 生きていた私たち
今思えばとても幼かった私たち
そして とても大切な思い出
そのあなたが嫁いでいくということを
どうして喜ばずにいられるでしょう
あまりにもありふれた言葉
多くの人たちが それぞれの思いをこめて贈った言葉
慶びのこの日
私にとっても慶びであるこの日に
私もあなたに贈ります 心をこめて
「おめでとう」

前の時代 ―過去の記憶、未来の記憶―

なつかしい気配
時代がささやく
2人が一緒だった前の時代の記憶が激しくささやきかける

 
 

忘れかけていた 遠い過去の記憶

人ごみのなかで ひとり部屋の中で

君のことを待っていた
出会うはずの君
どこかにいるはずの君
君への想いは ただ遠く かぎりなく遠く

手と手をとりあって走っていたよね
同じ夕陽を見て語り合った
空におりなすグラデーションの中で

君を見つけた時 遠くで光が見えた気がした
君を知って孤独を知った
君に触れて出会いを知った

何かがひとつになる瞬間

 

同じ風景 同じ想い出 同じ夢

同じ記憶の中で 朝まで抱き合って 朝までキスをした

見えるだろう
寄り沿って同じ夕陽を見ている2人が
輝く夕陽の中で微笑みあう2人が

扉をあけて目の前に続く道を走っていこう
なつかしい未来へ向かって
懐かしい未来
時代がささやく
2人の未来の走りつづける記憶が
激しくささきかける

紅バラ

真紅のバラよ
おまえは 時には年若い娘たちのあこがれの対象であったり
時には 愛の証であったり
おまえの美しさに誰もがひざまづき ひれふし
誰もがおまえを愛し 恋焦がれる

けれど 真紅のバラよ
おまえは 血に染まった白いバラ
野良犬たちは 土をほじくりかえし
おまえの足にからみついた白い骨を食らう
おまえには 墓場こそがふさわしい

真紅のバラよ
おまえは 闇夜の中で
ひときわあやしく ひかりかがやく

僕の空

ねえ
もしも 僕が空を飛べたなら
僕 銀の翼でまいあがるよ
あつい太陽が 翼をはじいて
きれいなことだろう
時々 白い雲の上で休むよ
そして もっと高く飛ぶんだ

ねえ
空の中って どんなふうだろう
空から 下を見れば
青く 見えるだろうか
光のようせいが 僕をつれて
海の向こうまで 行ってくれるだろう
みんなは 僕を見て おどろくだろうね

ねえ
僕 人のうらやむような翼で
空を 飛べたらいいな
からだの中まで blueになることだろう
心は 光のように
はじいていることだろう

ねえ
はやく 空を飛んでみたいんだ
今まで ずっと僕は いつでも
地面にしばりつけられてた
いつも 空を見上げるだけだったんだ
だけど 翼でまいあがる瞬間から
僕は もう 自由なんだよ

僕には わかるんだ
人はみな あぶくなんだてこと
いつも はかないんだ
だけど あぶくは消えたって
必ず 空のひとかけらになるんだ
僕 空って 大好きだ
僕のすべてを知りつくしてるから
だから 僕 こわくなんかないよ

ラサの都

たそがれていく 夕暮れ
白い山が赤く映える
囲まれた大地に刻み付けられた
宇宙の真理よ

絡みついた絆が砕け散るかも 雪の国、ラサの都に
祈り、思い、教え 摂理の中に沈みこむ
願い、平和、怒り 力が押し寄せてくるよ
一筋の光に群がり来る人々
無慈悲とも思える自然の営みが、君の前に立ちはだかる
時を越えて、君の前に
引き裂かれた空気の冷たさに、君は運命感じた

回り続ける命の輝きの中で、溢れている。君の思いが。
誓い、決意、恐れ 不安だけが通り過ぎる
一人、出会い、別れ 入り乱れる人の流れ
湖に映った光の予感に ほつれようもない未来の約束が
君の中で時を刻む 止められない時の中で

アクセルなんて必要なくて 静かな時の流れがあるだけ

未来、記憶、彼方 終わりの後に始まりが
希望、孤独、連鎖

囁きかけた言葉に振り向く君は、遠い過去、そして未来を見つめた

光、生命、自由

世界、宇宙、奇跡