点の記憶

遠い昔の記憶を手繰り寄せようとする
糸を紡ぐように
呼び起こされた記憶は
セピア色の写真のように色あせ
断片的で…

君の声は聞こえない
君が手を差し延べたその先は?
君の笑顔を見つめるのは誰?

年毎に君の姿は遠くなり
輪郭は、ぼやけた蜃気楼のように
おぼろげ

時々、君の呼ぶ声が聞こえる
あまりに鮮明で
思わず振り返りはするけれど
君の姿は見当たらない
記憶の中で
君の声は もう思い出せないのに

遠くからでも君の姿は見分けられた
その事は覚えているのに
記憶の中に
君の姿は見つけられない

至る所で君の気配を感じる
いつも使っていた階段
見下ろしていたベランダ
窓辺にもたれて 笑いかけて…
おいで…という仕草も
頬杖をついて「大丈夫」と片目を閉じて見せる癖も

いつの間にかすべて消え去って
きっと君の気配だけを感じるのだろう

よろしければ、一言どうぞ